相続税の節税対策について
2023年(令和5年)における被相続人数は1,576,016人。そのうち相続税の申告対象となったのは155,740人、割合にして約9.9%でした(国税庁統計)
この数字は、相続税がかかるのは「ごく一部だけ」と思われがちな現実を如実に示しています。ただし「かからない=無関係」では決してありません。なぜなら、相続では税金以外にも多くの問題が内包されており、節税対策は、生前からの準備が不可欠だからです。
基礎控除の仕組み
まず、相続税には「基礎控除」が設けられており、非課税枠は次のように計算されます:
3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)。
この範囲内であれば、相続税の負担は発生しません。
つまり、財産が抑えられるような仕組みや贈与を活用することが、効果的な節税の第一歩です。
贈与を活用した節税
その代表的な手段が「贈与」です。
生前贈与には暦年贈与制度があり、毎年110万円までの贈与は贈与税がかかりませんし、早期に少しずつ分割して動かしていけば、相続時の財産を減らすことが可能です。
ただし、相続発生直近の贈与で節税を試みても、相続開始前7年以内に行われた贈与は相続財産に加算されるルールがありますので、直前の贈与には注意が必要です。
不動産を活用した節税
不動産に着目した方法もあります。
自宅土地や建物を子どもに生前贈与しておくと、小規模宅地等の特例の適用を受けられる場合があります。これによって相続税評価額を大きく下げることができます。また、貸家経営を併用すれば、「貸家建付地」として評価を引き下げられるケースもあります。ただし、これらを利用する際には登記・賃貸契約・維持管理など細かい手続きと判断が必要です。
生命保険の活用
加えて、生命保険を上手に使う方法があります。
相続税には「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があり、生命保険を活用すれば相続税負担を軽減しながら現金の準備も進めることができます。特に、保険金は相続発生後すぐに支払われるため、納税資金の確保という観点でも有効です。
節税対策のリスク
しかし、節税対策を”ただ節税のために”進めることにはリスクがあります。
過度な贈与や無計画な不動産移動は、贈与税や固定資産税、贈与加算のリスクを招くこともあります。
そのため、重要なのは「目的と家族構成に合った対策を、適切な時期から段階的に進めていく」ことです。
民事信託との併用
そして、近年では「民事信託(家族信託)」との併用も注目されています。
例えば、将来認知症などで判断能力が衰えたときに備え、信託契約を結び、子どもなどを受託者として財産管理を託しておくことで、財産の凍結や管理トラブルを防ぎつつ、節税対策を進める道も開けます。
相続税の節税は、「節税のためだけの手段」ではなく、「家族が安心して受け継げる相続」に向けた準備の一部です。
生前から少しずつ進めていくことが、家族の未来を守るための鍵となるのです。
節税対策をお考えの方へ
相続税の節税対策は、ご家庭の状況や財産構成によって最適な方法が異なります。当事務所では、お客様に合わせた適切な節税プランをご提案いたします。お気軽にご相談ください。


