相続人が行方不明のとき、どうすればいい?
相続手続きを進めるうえで、意外と多いトラブルの一つが「相続人の中に連絡が取れない人がいる」というケースです。
兄弟姉妹のうち一人が長年疎遠になっている、親戚が海外に移住して行方が分からないなど、家庭の事情はさまざまですが、相続では「相続人全員の合意」がなければ何も進みません。
このため、行方不明者の存在が、遺産分割協議の大きな壁になることがあります。
行方不明者がいる相続の実態
実際、家庭裁判所の統計によると、遺産分割をめぐる調停や審判の中でも「相続人の一部が不明または所在不確実」と記載された案件は、全体の約1割に上るとされています(司法統計年報 家事事件編)。
相続人が一人でも欠けると協議が成立せず、不動産の名義変更や預金の解約もできません。
では、どうすればよいのでしょうか。
最初に行うべき「所在の確認」
まず、最初に行うべきは「所在の確認」です。
戸籍の附票や住民票の附票(住所履歴が記載された書類)を取得すれば、転居の履歴や最後の住所地を確認できます。
これをもとに、現住所へ郵便を送る、親族や知人に連絡を取るなど、できる限りの手段で所在確認を行いましょう。
それでも見つからない場合は、次の法的手続きを検討することになります。
不在者財産管理人の選任
行方不明者が長期間所在不明の場合には、「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立てることができます。
これは、不在者の代わりに財産を管理し、相続手続きなど必要な行為を代行できる人を裁判所が選任する制度です。
不在者財産管理人が選ばれれば、その人の同意を得て遺産分割協議を進めることが可能になります。
ただし、不在者の権利分は確保されることや、管理人の選任に時間がかかり、報酬も発生するため、事前の相談と準備が必要です。
失踪宣告という選択肢
さらに、行方不明が長期にわたり、生死が確認できない場合は「失踪宣告」という制度もあります。
これは、7年以上音信不通の場合に、法律上「死亡したもの」とみなして相続手続きを進める制度です(民法第30条)。
ただし、家族関係に大きな影響を及ぼすため、慎重な判断が求められます。
形式的に進めるのではなく、他の相続人と十分に話し合い、理解を得たうえで行うことが重要です。
日頃からの家族関係維持
こうしたケースを防ぐために、日頃から家族関係や親戚とのつながりを保つことも大切です。
近年では、家族の高齢化や遠方居住により、相続発生時に初めて「どこに住んでいるのか分からない」という事態になることが増えています。
生前のうちに、家系図や連絡先リストを作っておくだけでも、将来の相続手続きがスムーズになります。
遺言書・民事信託(家族信託)契約の活用
また、将来の相続人不明リスクが想定される場合は、生前元気なうちに、遺言書や民事信託(家族信託)を活用することで、リスクを回避することが可能です。
たとえば、遺言書によって誰が・何を・どれくらい相続するかあらかじめ指定しておいたり、民事信託によって信頼できる家族の一人を受託者に指定し、不動産等の財産を受託者名義で管理しておけば、相続発生後も財産を凍結させずに運用・承継を継続できます。
複数の相続人が関与しにくい場合や、親族が遠方にいる場合にも有効な仕組みです。
相続人が行方不明の場合、感情的に「どうしようもない」と諦めてしまう方も少なくありません。
しかし、法律上はきちんと手続きを踏めば前に進めることができます。
困ったときは、相続コンサルタントなどの専門家に相談しながら進めましょう。
冷静に状況を整理し、一つひとつ手続きを進めていけば、問題は必ず解決に近づきます。
出典
裁判所「令和5年司法統計年報 家事事件編」
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/Houki/statistics_2023/index.html
行方不明の相続人がいる場合のご相談
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