遺産分割協議書ってなに?書かないとどうなる?
相続が発生すると、避けて通れないのが「遺産分割協議」です。
これは、遺産を誰がどのように受け取るかを、相続人全員で話し合って決める手続きのこと。
そして、その内容を書面にまとめたものが「遺産分割協議書」です。
一見、ただの書類のように思われがちですが、この一枚があるかどうかで、相続手続きの流れが大きく変わります。
協議書がないとどうなるか
法務省の統計によると、遺産分割をめぐる家庭裁判所の調停・審判件数は、年間約17,000件にも上ります(令和5年司法統計年報より)。
背景には、「話し合いがまとまらない」「協議書を作らずに口約束のまま進めた」といったケースが少なくありません。
つまり、協議書は”家族の約束を形に残す”ために不可欠な書類なのです。
なぜ必要なのか
では、具体的に何のために必要なのでしょうか。
相続財産の名義変更ができない
まず、遺産分割協議書がないと、相続財産の名義変更ができません。
例えば不動産であれば、法務局で登記手続きを行う際には、相続人全員の署名・押印のある協議書が必要です。
もし一人でも署名を拒めば、名義変更はできず、土地や家の売却・活用も不可能になります。
また、銀行の預金や株式を引き出す場合も、協議書が求められるのが一般的です。
税務上のリスク
次に、税務上のリスクです。
遺産分割協議書がないまま相続税を申告すると、「暫定的な分割」として処理され、特例控除(配偶者控除や小規模宅地等の特例など)が受けられない場合があります。
つまり、正式な書面を作らないまま申告してしまうと、余計な税金を払うことにもなりかねません。
時間が経つほどトラブルが増える
さらに、時間が経つほどトラブルのリスクも増します。
協議書を作らず「とりあえず現金だけ分けておこう」と済ませた結果、後になって「やっぱり不動産も分けたい」「実は預金が他にもあった」といった問題が発覚し、再び全員で話し合いをやり直す羽目になることもあります。
相続人が亡くなったり、連絡が取れなくなったりすれば、話し合い自体が不可能になってしまうこともあります。
安全に進めるには
では、どうすれば安全に進められるのでしょうか。
相続人全員で合意する
まず、協議書の作成は相続人全員が同席して合意することが大前提です。
相続人の誰か一人が作成して他人に押印を求めると、「本当に納得していたのか」「勝手に書かれたのではないか」と後々争いになることがあります。
話し合いの場では、感情的にならず、冷静に事実を整理しながら進めることが大切です。
内容を具体的に記載する
また、内容はできるだけ具体的に記載することが重要です。
「長男が実家を相続する」「次男が預金を相続する」といったように、財産の内容・所在地・金額を正確に記載し、誰がどれを取得するかを明記します。
曖昧な表現は、のちの誤解のもとになります。
遺言書や民事信託(家族信託)の活用
最近では遺言書や民事信託(家族信託)に対する理解も進み、生前元気なうちに書面を作成して、あらかじめ財産の管理・承継方法などを契約・遺言により定めておくケースも増えています。
これにより、相続が発生してもスムーズに承継が進み、協議書をめぐるトラブルを未然に防ぐことが可能です。
相続は「家族の話し合い」であり、同時に「法的な手続き」でもあります。
だからこそ、感情だけで動かず、正確な書面で残すことが大切です。
遺産分割協議書の作成や進め方に迷ったときは、相続コンサルタントなどの専門家に相談しながら進めましょう。
早い段階で正しく手続きを整えておくことが、家族の関係を守る最善の一歩です。
出典:
裁判所「令和5年司法統計年報 家事事件編」
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/Houki/statistics_2023/index.html
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