「実家をどうする?」が、相続で最も揉めやすい理由
相続の相談で非常に多いのが、「実家をどうするか決まらない」という問題です。
預貯金のように簡単に分けられる財産と違い、不動産は“分けにくい財産”です。
特に実家には、感情・思い出・生活・お金など、さまざまな要素が絡むため、相続トラブルの原因になりやすいのです。
国土交通省によると、日本全国の空き家は900万戸を超え、過去最多となっています。
その背景の一つとして、「相続後に実家をどうするか決まらず放置されるケース」が増えていることが指摘されています。
「住みたい人」と「売りたい人」
実家相続で最も多い対立が、「住み続けたい人」と「売却したい人」の対立です。
たとえば、
このようなケースは非常に多くあります。
不動産は現物をそのまま平等に分けることが難しいため、誰かが取得すれば、他の相続人とのバランス調整が必要になります。
しかし、十分な預貯金がない場合、その調整金(代償金)が支払えず、話し合いが止まってしまうことも少なくありません。
「共有名義」がさらに問題を複雑にする
揉めた結果、「とりあえず共有名義にしておこう」という選択をする家庭もあります。
しかし、共有名義は後々さらに大きな問題になるケースが多くあります。
共有不動産は、売却・建替え・賃貸などを行う際、共有者全員の同意が必要になる場面が多くあります。
そのため、時間が経つほど権利関係が複雑化し、「誰も動かせない不動産」になってしまうこともあります。
さらに、共有者が亡くなることで相続人が増え、権利関係が枝分かれしていくケースも少なくありません。
「空き家化」が大きな社会問題に
実家問題は、家族だけの問題ではありません。
放置された空き家は、
など、地域全体に影響を与えることがあります。
近年は、相続登記義務化など、国も空き家・所有者不明土地問題への対策を強化しています。
つまり、「そのうち考えよう」が通用しにくい時代になってきているのです。
元気なうちの話し合いが重要
こうした問題を防ぐためには、親が元気なうちに方向性を決めておくことが非常に重要です。
たとえば、
などを事前に共有しておくだけでも、相続時の混乱は大きく減ります。
また、遺言書で取得者を明確にしたり、生命保険を活用して代償金を準備したりする方法も有効です。
民事信託(家族信託)という選択肢
最近では、実家対策として民事信託(家族信託)を活用するケースも増えています。
たとえば、親を委託者、子を受託者として契約し、実家を受託者名義にしておくことで、将来的な管理・売却・建替えなどをスムーズに行いやすくなります。
特に、認知症による財産凍結リスクへの備えとして有効であり、「介護費用のために売却したいのに動かせない」という問題を防ぐことにつながります。
実家は「財産」であり「感情」でもある
実家問題が難しいのは、金額だけでは測れない感情があるからです。
「思い出がある」「親を支えてきた」「帰る場所を残したい」――そうした気持ちがぶつかることで、話し合いが難しくなることがあります。
だからこそ、相続が発生してから考えるのではなく、生前のうちから方向性を整理しておくことが大切です。
不安がある場合は、相続コンサルタントなどの専門家に相談しながら、家族に合った形を考えていきましょう。
出典
総務省「令和5年住宅・土地統計調査」
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/index.html
