「孫に財産を残したい」それ、できます
「子どもではなく、孫に財産を残したい」
そう考える方も、最近は増えてきています。
背景には、
・孫の教育費や住宅取得を支援したい
・介護などで関わってくれている
・子ども世代を飛ばして承継したい
・事業や不動産を孫へ引き継ぎたい
など、さまざまな理由があります。
ただし、ここで注意したいのが、「孫は原則として法定相続人ではない」という点です。
そのため、何もしなければ自動的に孫へ相続されるわけではないことを理解しておく必要があります。
孫が相続人になるケース
民法では、配偶者は常に相続人となり、それ以外の親族については相続順位が定められています。
第1順位は子ども、
第2順位は父母などの直系尊属、
第3順位は兄弟姉妹です。
孫は、原則として法定相続人には含まれません。
ただし、子どもがすでに亡くなっている場合には、「代襲相続」によって孫が相続人になることがあります。
たとえば、父が亡くなり、本来相続人となる子どもがすでに死亡している場合、その子どもの子、つまり孫が代わりに相続人となります。
しかし、子どもが存命である場合は、孫へ直接財産を残すには別の対策が必要になります。
最も一般的なのは「遺言書」
孫へ財産を残したい場合、最も基本となるのが遺言書です。
たとえば、
「自宅不動産を孫へ遺贈する」
「預貯金の一部を孫へ残す」
などを遺言書で指定することができます。
ただし、注意点もあります。
孫自身には遺留分がありませんが、子どもなどの法定相続人には、最低限留保される権利(遺留分)があるため、内容によっては後からトラブルになることがあります。
そのため、孫へ多く残したい場合には、全体のバランスを見ながら設計することが重要です。
さらに、代襲相続人でない孫が遺贈や生命保険等で財産を取得した場合、その孫の相続税額は原則として「2割加算」の対象となります。
生前贈与という方法もある
元気なうちに財産を渡したい場合には、生前贈与という方法もあります。
特に有名なのが、年間110万円までの基礎控除です。
この範囲内であれば、原則として贈与税がかかりません。
また、18歳以上の孫であれば、「相続時精算課税制度」を活用できるケースもあります。
これは、祖父母などから累計2,500万円までの贈与について、一定条件のもと贈与税を抑えながら承継できる制度です。
なお、教育資金贈与については期限付き制度となっており、今後の制度動向にも注意が必要です。
ここで注意したいのが、相続開始前7年以内(※2024年以降の贈与から段階的に延長中)の贈与の持ち戻しです。
この制度は、被相続人から生前贈与を受けた人が、相続や遺贈によって財産を取得した場合に、その贈与財産を相続税の計算に加算するというものです。
そのため、孫が法定相続人ではなく、遺言による遺贈や生命保険金などによって財産を取得しない場合は、原則として持ち戻しの対象にはなりません。
一方で、孫が遺言によって財産を取得する場合や、生命保険金の受取人として相続税の課税対象となる財産を取得する場合には、生前贈与分が持ち戻しの対象になる可能性があります。
また、孫が代襲相続人となる場合は、法定相続人として財産を取得する立場になるため、相続開始前7年以内の贈与についても加算対象になります。
つまり、孫への生前贈与は有効な方法ですが、将来その孫が相続・遺贈・生命保険金などで財産を取得するかどうかによって、税務上の取扱いが変わる点に注意が必要です。
生命保険を活用する方法
実務上、非常に活用されるのが生命保険です。
生命保険は、受取人を孫に指定することができます。
そのため、「確実に孫へ資金を残したい」という場合に有効です。
また、保険金は比較的早く支払われるため、教育費や生活支援資金として活用しやすい特徴があります。
ただし、孫が法定相続人(代襲相続人)でない場合、死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)は適用されません。全額が相続税の対象となる点に注意が必要です。
さらに、代襲相続人でない孫が生命保険金を受け取る場合、その孫の相続税額は原則として「2割加算」の対象となります。
民事信託(家族信託)を活用するケースも
最近では、長期的な承継対策として、民事信託(家族信託)を活用するケースも増えています。
たとえば、
「自分の死亡後は子へ、さらにその後は孫へ」
というように、財産承継の流れを設計できるケースがあります。
ただし、権利が次世代へ移るごとに相続税の課税対象となるため、税務上のシミュレーションもセットで行うことが不可欠です。
不動産や事業承継など、代々引き継いでいきたい財産がある場合には、有効な対策となることがあります。
「誰に残したいか」を整理する時代
これからの相続は、「法定相続通りに分ける」だけではなく、誰に、どんな想いで残したいかを整理する時代になっています。
ただし、感情だけで進めると、後から家族間トラブルになることもあります。
税務・法律・感情面まで含めて整理しながら進めることが重要です。
孫への承継を考える場合は、相続コンサルタントなどの専門家に相談しながら、自分の家庭に合った形を検討していきましょう。
出典
国税庁「No.4157 相続税額の2割加算」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4157.htm
国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103_qa.htm
国税庁「No.4408 贈与税の基礎控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm
国税庁「No.4161 贈与財産の加算」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm
