相続は“亡くなってから”では遅すぎる理由
相続という言葉を聞くと、多くの方は「亡くなった後の手続き」をイメージされると思います。
たしかに、死亡届、預金解約、不動産の名義変更、相続税申告など、亡くなった後に行う手続きはたくさんあります。
しかし、相続の現場で本当に問題になるのは、亡くなった後ではなく、その前から始まっていることが多いのです。
亡くなってからでは、本人の意思を確認できない
相続で最も困るのは、「本人がどうしたかったのか分からない」という状態です。
こうした本人の想いは、亡くなった後には確認できません。
残された家族は、推測で話し合うことになります。
そして、その推測が食い違うことで、相続人同士の対立が起こります。
認知症になってからでも遅い
さらに注意したいのは、「亡くなる前ならいつでも対策できる」というわけではないことです。
遺言書の作成、生前贈与、民事信託(家族信託)の契約などは、本人に判断能力があることが前提です。
認知症などで判断能力が低下してしまうと、これらの対策は難しくなります。
たとえば、親名義の預金を介護費用に使いたい。
実家を売却して施設入所資金にしたい。
このような場合でも、本人の意思確認ができなければ、自由に進めることはできません。
つまり、相続対策は「亡くなる前」ではなく、「元気なうち」に行う必要があるのです。
税金対策も時間が必要
相続税対策も、亡くなってからではできることが限られます。
生前贈与は、早い段階から計画的に進めることで効果を発揮します。
相続開始前7年以内の贈与は、2024年以降の贈与から段階的に相続税の計算へ持ち戻されるため、直前の対策では十分な効果が出にくくなっています。
また、生命保険の活用、不動産の整理、納税資金の準備なども、時間をかけて設計することが大切です。
「相続税がかかるかどうか分からない」
「納税資金が足りるか分からない」
この状態のまま相続を迎えると、「うちは資産家じゃないから」と思っていたご家族ほど、慌てて対応することになります。
家族の感情整理も生前だからできる
相続は、法律や税金だけの問題ではありません。
家族の感情が深く関わります。
長年介護をした人。
遠方で関われなかった人。
生前に援助を受けていた人。
親と同居していた人。
それぞれの立場が違うため、亡くなった後にいきなり話し合っても、簡単にはまとまりません。
生前のうちに、本人の考えを伝え、家族の事情を共有しておくこと。
これが、相続トラブルを防ぐうえで非常に重要です。
相続対策は「今の生活」を守る準備でもある
相続対策というと、財産をどう分けるかばかりに目が向きがちです。
しかし実際には、本人が生きている間の生活、介護、療養を支えるための準備でもあります。
認知症になったとき、誰が財産を管理するのか。
介護費用はどこから支払うのか。
実家をどう活用するのか。
こうしたことを元気なうちに決めておくことで、本人も家族も安心して生活できます。
「まだ早い」と思う今が始めどき
相続は、亡くなってから考えるものではありません。
そして、認知症になってからでは、できることが大きく限られます。
だからこそ、「まだ早い」と思える今が、実は一番良いタイミングです。
まずは、財産の全体像を整理する。
家族と少しずつ話してみる。
いきなりお金の話をするのではなく、「これからの暮らしの希望」や「健康のこと」から聞いてみるのがコツです。
必要に応じて、遺言書、生命保険、民事信託(家族信託)などを検討する。
こうした一歩が、将来の家族の安心につながります。
不安がある場合は、相続コンサルタントなどの専門家に相談しながら、自分たちの家庭に合った準備を進めていきましょう。
