相続でよくある“勘違い”5選
相続に関する相談を受けていると、「それ、実は違います」というケースが少なくありません。
思い込みのまま手続きを進めてしまうと、後からトラブルや損失につながることもあります。
ここでは、実務で特に多い“勘違い”を5つご紹介します。
勘違い①「配偶者が全部相続できる」
「夫婦なんだから、全部もらえるでしょ」と思われがちですが、これは誤解です。
遺言書がない場合、配偶者は必ず相続人になりますが、子どもがいれば共同相続となります。
さらに、子どもがいない場合でも、配偶者だけで完結するとは限りません。
この場合、被相続人の父母、または兄弟姉妹が相続人となり、複数人での遺産分割協議が必要になります。
つまり、配偶者がすべて取得するためには、事前の遺言書作成や相続人間の合意が不可欠です。
勘違い②「長男が多くもらうのが当たり前」
昔の感覚で「長男が多く相続する」と思われている方もいますが、現在の法律では相続人は原則として平等です。
特別に多く残したい場合は、遺言書などで明確に意思表示をしておく必要があります。
勘違い③「相続税はお金持ちだけの話」
確かに相続税が発生する人は全体の約1割程度ですが、「関係ない」とは言い切れません。
不動産がある場合や、生命保険の加入状況によっては課税対象になることもあります。
また、税金がかからなくても、遺産分割や手続きの問題は必ず発生します。
勘違い④「遺言書があれば絶対に揉めない」
遺言書は非常に有効な対策ですが、それだけで完全にトラブルを防げるわけではありません。
まず前提として、生前の財産管理や介護・療養の世話などの貢献は、法律上そのまま十分に評価・反映されるとは限りません。
そのため、「自分がこれだけやったのに」という感情と、実際の分け方との間にズレが生じやすくなります。
また、相続は制度上“平等”が原則ですが、現実には家族ごとの事情があり、完全な平等は難しいものです。
だからこそ、生前の対策として、
・財産管理の仕組みづくり
・遺言内容の工夫
・生命保険の活用(他の相続人の権利に関係なく受け取りができる)
などを組み合わせながら、感情面への配慮を行うことが重要になります。
遺言書は「法的な整理」には有効ですが、「感情の整理」までは自動的に解決してくれない、という点を理解しておく必要があります。
勘違い⑤「何も準備しなくてもなんとかなる」
これが最も多く、そして最も危険な勘違いです。
実際には、準備をしていない相続ほど揉めやすく、手続きも長期化する傾向があります。
・財産の内容が分からない
・誰が何を引き継ぐか決まっていない
・家族間で認識がずれている
こうした状態で相続が発生すると、問題が一気に表面化します。
勘違いを防ぐために
相続は「知らないこと」がトラブルの原因になります。
逆に言えば、基本を理解しておくだけでも、大きなリスクを回避できます。
まずは、
・自分の財産を把握する
・家族と共有する
・必要に応じて遺言書を作成する
こうした基本的な準備を進めることが大切です。
さらに、将来の認知症リスクに備えるために、民事信託(家族信託)などを活用することも有効です。
早めに対策を取ることで、選択肢が広がります。
不安がある場合は、相続コンサルタントなどの専門家に相談し、正しい知識をもとに準備を進めていきましょう。
“思い込み”を一つずつ解消していくことが、円満な相続への第一歩です。