介護保険制度が変わる
――利用者負担”2割時代”の到来と、その影響を考える
少子高齢化が加速する日本では、介護を取り巻く環境が大きく変わろうとしています。
2025年には、いわゆる「団塊の世代」がすべて75歳以上となり、介護保険サービスを利用する高齢者が急増する見通しです。
こうした中、国は制度の持続性を確保するため、利用者負担や保険料の見直しを進めています。
負担割合はどう変わる? ― 1割から2割へ
現在、介護サービスを利用する際の自己負担割合は、原則1割です。
ただし、所得が一定以上の人は2割または3割負担となっています。
厚生労働省は、2027年度をめどに2割負担の対象を拡大する方向で検討を進めています。
つまり、「いまは1割で済んでいる人」も、将来的には2割になる可能性があるということです。
実際、社会保障審議会・介護保険部会の報告では、制度を支える現役世代の負担が限界に近づいていることが指摘されており、「所得に応じた公平な負担」を実現するために段階的な見直しが必要とされています(厚生労働省「介護保険制度をめぐる状況について」2024年)。
介護保険料も上昇傾向 ― 将来は月1万円超えの可能性も
介護サービスを支えるもう一つの柱が「介護保険料」です。
65歳以上が支払う第1号被保険者の介護保険料は、制度開始当初(2000年度)に全国平均で月額約2,900円だったものが、令和5年度には約6,000円へと倍増しました。
さらに、2040年ごろには月8,000円~1万円前後に達する見通しともいわれています(NLIリサーチ・厚労省資料より)。
この上昇は、要介護者の増加に加え、介護職員の人件費や処遇改善の必要性、施設整備の負担などが背景にあります。
つまり、介護費用の”総額”が右肩上がりで増えており、制度全体の再設計が避けられない状況なのです。
介護現場・消費者それぞれの影響
今回の見直しは、介護福祉事業者と利用者の双方に大きな影響を与えます。
介護福祉事業者への影響
まず、介護福祉事業者にとっては、利用者の自己負担増が利用控えにつながるリスクがあります。
在宅介護サービスやデイサービスの利用回数を減らす家庭が増えれば、事業収益に直結します。
一方で、慢性的な人手不足や報酬抑制も続いており、経営環境は厳しさを増しています。
利用者・家族への影響
次に、利用者やその家族の負担も重くなります。
たとえば、要介護1の人が月1万6千円前後支払っていた介護費用が、2割負担になると3万円を超える試算もあります。
施設入居や在宅サービスの継続が難しくなる家庭も出てくるでしょう。
こうした事態を防ぐためには、家族の介護費用をどう確保するかを早めに考えておくことが大切です。
特に高齢の親が認知症などで意思判断ができなくなった場合、銀行口座が凍結して支払いが滞るケースもあります。
そのようなリスクに備えて、民事信託(家族信託) を活用し、あらかじめ家族が財産管理を代行できる体制を整えておくことで、介護費用の滞納や手続きの混乱を防ぐことができます。
介護サービスの継続性を守るうえでも、利用者側の備えは非常に有効です。
これからの介護に備えて
介護保険制度の改正は、「誰かの問題」ではなく、すべての世代に影響するテーマです。
現役世代は、親の介護費用と自らの将来負担の両方を見据える必要があります。
高齢者は、今後の自己負担増を見込み、資金計画やサービス利用の優先順位を整理しておくべき時期に来ています。
制度の改正は数年単位で進むため、ニュースや行政発表を継続的にチェックし、変化に合わせて柔軟に対応していくことが求められます。
不安や疑問がある場合は、相続コンサルタントなどの専門家に相談して、自分や家族に合った備え方を確認することが大切です。
介護を”支える側”も”受ける側”も、これからは「知って備える」ことが最大の安心につながります。
出典
厚生労働省「介護保険制度をめぐる状況について」(2024年)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001364995.pdf
NLIリサーチ「介護保険の2割負担拡大、相次ぐ先送りの経緯と背景は?」
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=77759
全国老人ホーム紹介センター「介護保険改正で自己負担はどうなる?」
https://nagoya-roujinhome.jp/blog/10009507/
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